私は熱心に宗教の道場に通いましたが
私に聞こえる声はひどくなる一方でした。
私はあせっていました。
「早くこの霊を取り去って平穏な気持ちになりたい」
でも症状は重くなるばかりでした。
ある日、知り合いのお坊さんに頼んで
有名なお寺に除霊に行きました。
お寺では全然除霊ができず、お坊さんに怒られた
荘厳な衣装に身を包み、お坊さんはお経を読みながら私の周りをぐるぐると回りました。
私の体はゆらゆらと揺れています。
お坊さんのお経が終わろうとするとき
私の中の何かが声に出して叫びました。
「祓えぬぞ、祓えぬぞ!」
その途端、お坊さんは私に向かって叫びました。
「金は返すから帰りなさい!」
お経料として渡した5千円の包みを私に返しました。
「世の中には重病で死にそうで、生きたい、生きたい、と思っている人もいるのに
ふざけているんじゃない!帰りなさい」
お坊さんは私が悪戯をしている、と思ったようでした。
外では雨が降り出していました。それでもお坊さんは
「傘を貸して上げる」
と言ってくれました。
「
家、傘は持ってます」
と、答えて、私は雨の中を泣きながら歩きました。
仏教では「輪廻転生」は認めていません。つまり霊の存在を認めていません。
だから仏教では霊は祓えない、という話は聞いたことがあります。
私はどこにも助けがないことを感じながら、雨の中を傘で顔を隠して
泣きながら駅までの道を歩きました。