母が死んで49日目、母の遺骨を墓に入れることにしました。
私の家の墓は、今住んでいるところから、電車で2時間ほど離れた場所にあります。
私は母の遺骨を抱えて、電車に乗りました。
こんな際ですから、グリーン車に乗りました。
グリーン車はガラガラで、私は遺骨を私の隣の席に置きました。
そして、呟きました。
「ねえ、お母さん、お母さんとはいつも一緒に出かけたけれど、これが最後のお出掛けになるねえ」
その言葉をつぶやいた瞬間、死んだ母の言葉が頭の中で光りました。
その言葉を呟いた途端に私の頭の中に電光掲示板のような文字が浮かんで消えました。それが赤だったか、緑だったか? どちらかの色で光っていました。その文字は横に走って消えました。
「ゆめみちゃん、どうもありがとう」
活字体の文字は確かに私の頭の中に浮かんで消えました。
「ああ、お母さんだ、お母さんが私に伝えている」
魂はあるのだなあ、とぼんやり思いました。
思えば、母が死んでから、ずっとその傾向はあったのです。
私は毎日家で泣いていましたが、部屋中でラップ音がするのです。
ピシッ! パシッ! というラップ音はとても激しく
部屋中に鳴り響いていましたが、私はそれが怖くはありませんでした。
それから小さな虫が、いつも私の側に何匹か飛んできました。
グルグルと私の周りを小虫が飛び回っていました。米粒より小さい虫でした。
その虫は、時に食事中の私の箸にとまりました。
私は、母親が心配して虫に乗って私のそばに来てくれたのだと思いました。
「お母さん、お母さん、お母さん」
私は際限もなく泣いていました。
両親が死んで何年か、私は両親の夢を見ませんでした。自分で親の夢が見たくない、と思ったからです。
見事なくらい、全く親の夢をみませんでした。
今、両親の夢を時々見ます。夢の中で、ああ私の親は死んだんだっけ、と思い出して悲しくなります。
私は今、自分の死ぬ日を待っています。死んで親の所へまっすぐに行きたいのです。でも、私の寿命は事故とか病気が無ければ、なと何十年かあるでしょう。……長いなあ、と思います。
私は自殺はできませんから、寿命のある限り一人で生きていきます。
できれば残された日々を、より良く生きられますように。