そもそも私が統合失調症になったのは、マンション上階の騒音からだった。
私の住んでいるマンションは、(当時)田舎にしては高級だ、と言われているマンションで
それなりの金額がしたし、コンクリートは十分に使われている。
その証拠、というのかどうかわからないが
他のマンションでよく聞こえる、と言われるトイレの水を流す音、とか
お風呂に入る音、などは全然聞こえない。
マンションの環境は住民次第だ。
長年、何の音もしなかった。そういうマンションだ、と思っていた。
ところが、約6年前のある日、私の部屋の上階に新しい住人が越してきた。
前の住人は高齢のご夫婦で、問題がなかったわけでは無いが、上から音は聞こえてこなかった。
その高齢のご夫婦が亡くなって、その娘夫婦が引っ越してきてから、様子が変わった。
おそらく50代と思われる夫婦と、その娘20代がうるさい。
足音が聞こえる、などという生やさしいものではない。
どこからどこを歩いているのかわかるのだ。
おまけにドア、サッシ、網戸に至るまで、力一杯閉めるのだ。
絶えず、音が聞こえる。
たまりかねて、上階に言いに行った。
「音が響くので静かにして下さい」
最初、上階の住民は従順だった。
「気を付けます、うるさかったらいつでも言って下さい」
と、返事をした。
だが、全然治らなかった。
当然だ、足音を立てないように歩くのは大変だし
力一杯ドアを閉めて、音が聞こえる、と思っていない。
私は再び言いに行った。
「戸を閉める音が響くんですけど」
上階の住民の表情は
「そんな音が聞こえるわけ無いじゃないか、この○○外」
で、その後、上階の住民は娘と二人で、盛大に足音を立て始めた。
私は数分我慢していたが、腹が立ったので
リビングと廊下のしきりにあるドアを、体重を掛けて
力一杯閉めて
「ドッカーン!」
自分でも思いがけないほどの音がした。
その瞬間、足音は止まった。
音が響く、ということがわかったらしい。